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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)78号 判決

請求原因事実はすべて当事者間に争いがなく、右事実によれば本件審決の取消を求める原告の請求は理由がある。

よつて本訴請求を認容する。

〔編註〕 本件における請求の原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

1 原告は名称を「紙を抄く方法」とする発明について発録第六五六四〇六号特許(昭和四二年三月二四日出願、昭和四六年一月一三日出願公告、昭和四七年八月二一日設定登録、以下「本件特許」といい、これに係る発明を「本件発明」という。)の特許権者であるが、被告は昭和四八年三月二日原告を被請求人として本件特許の無効審判を請求した。特許庁はこれを昭和四八年審判第一一六四号事件として審理し、昭和五五年二月一四日本件特許を無効とする旨の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年三月一五日原告に送達された。

2 この間原告は、本件発明につき特許請求の範囲の減縮を含む明細書の訂正をすることについて昭和五六年一一月一九日審判を請求したところ、昭和六〇年一〇月二日右特許請求の範囲につき次項2のとおり訂正を認める旨の審決があり、その謄本は同年一一月二〇日原告に送達された。

二 本件特許の特許請求の範囲

1 前記訂正審決による訂正認可前のもの

重合度が少くとも二万以上で、〇・一重量%の水溶液について一八度Cで測定した場合の比電導度が3×10-4Ω-1cm-1以下であるポリアクリルアミドを抄紙の際の分散粘剤として紙料液に添加することを特徴とする抄紙方法

2 前記訂正審決による訂正認可後のもの(傍線部分が訂正によつて付加された部分)

重合度が少なくとも二万以上で、〇・一重量%の水溶液について一八度Cで測定した場合の比電導度が3×10-4Ω-1cm-1以下であるポリアクリルアミドを抄紙の際の分散粘剤として紙料液に〇・〇〇〇五%より低い濃度で添加することを特徴とする抄紙方法

三 本件審決の理由

本件審決は、本件発明の要旨を前項1に記載のとおり認定し、また特許第九七一一六九号発明(昭和四一年一月三一日出願、昭和四五年一二月二三日出願公告、以下これを「先願特許発明」という。)の要旨を後記訂正審決による訂正認可前のその特許請求の範囲に記載されたとおりのものであると認定した上、両発明は共に、紙特に和紙の抄紙にあたり分散粘剤としてポリアクリルアミド系重合体を使用して抄紙性能を向上させ良質な紙を得るものであるところ、右ポリアクリルアミド系重合体に両者重複するものがありその場合抄紙時の分散粘剤の濃度の点でも重複する範囲があるので、両発明は同一発明といわざるをえず、従つて本件特許は特許法三九条一項に違反してなされたものとして同法一二三条一項一号により無効である、というものであつて、その理由は別紙のとおりである。

四 本件審決の取消事由

1 原告は、本件発明と先願特許発明とが実質的に相違するものであることを明確にするために、第一項2に記載のとおり本件発明の特許請求の範囲の減縮を含む訂正認可の審決を得た。これにより本件発明における抄紙の際の分散粘剤の濃度範囲が減縮された。

2 また原告は、昭和五五年四月二五日先願特許発明の特許権(昭和五四年八月三一日設定登録)を取得したことから、前同様本件発明と先願特許発明とが実質的に相違するものであることを明確にするために、昭和五六年一一月一九日先願特許発明の特許請求の範囲の減縮を含む明細書の訂正をすることについて審判を請求したところ、昭和六〇年八月二〇日これを認可する審決があり、その謄本は同年九月二八日原告に送達された。

右審決によつて訂正が認められた先願特許発明の特許請求の範囲は次のとおりである(傍線部分が訂正によつて付加された部分)。

「和紙の抄造のためにアクリルアミド系重合体の水溶液をパルプ分散剤として使用するに当り、該アクリルアミド系重合体としてポリアクリルアミドの部分的加水分解生成物であつて顕著な曳糸性を有するものを特に選択すること、かつ抄紙時の該分散剤の濃度を下記式

<省略>

(式中Dはパルプ分散度、toはパルプ一gを水一l中に攪拌分散させたものを一lのメスシリンダー中に注入して放置した場合にパルプが一〇〇ml沈降するのに要する時間、tsはパルプ分散剤を使用して同様に測定したときの時間を示す)で表わされるパルプ分散度が〇・一乃至〇・五となるように保つて、紙料液に対し、〇・〇五~〇・〇〇〇五%の範囲とすることを特徴とする和紙の抄造方法。」

これにより先願特許発明における抄紙時の分散剤の濃度が減縮された。

3 以上のことから明らかなとおり、本件発明及び先願特許発明についてそれぞれ訂正審決があつたことにより、本件審決は本件発明及び先願特許発明の各要旨の認定を誤つたこととなり、その結果本件発明と先願特許発明とは抄紙時の分散粘剤の濃度において重複する範囲があるとの誤つた認定に基づいて両者を同一の発明であると判断したものであるから、違法として取消を免れない。

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